そろそろ最強の洗車方法を完成させよう

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数ある沼の中でも、洗車沼と呼ばれるものは厄介だ。

絶対的な正解がないものや、最終的なゴールが見えず、終わりのない散財やコレクションを繰り返してしまう点は、他の趣味における沼と変わりはない。

金額や性能の折り合いに悩み、物欲に負けて上位互換に乗り換え続けるのも同様だろう。

洗車沼が他の沼と大きく違う点は、いかに楽をして愛車を綺麗な状態に保つのか、この一点に尽きる。悩むのは金額と労力との折り合いである。

 

愛車の敵

そもそも、洗車の目的とは何だろうか。車を綺麗にすることである。

ならば車の汚れとは何か?そこから詳しく解説せねばなるまい。

・砂や泥、地域や季節によっては花粉、黄砂、火山灰、融雪剤

付着して時間が経過していなければ、ほとんど水洗いで落とせる。カーシャンプーを併用するとそれほど苦労することはないだろう。洗車頻度が求められ、ボディへの傷を誘発する憎いヤツ。洗車と聞いて想像するのは、通常ここまでだろう。

 

鉄粉、ブレーキダスト

主に足回りに発生し、欧州車に多く見られる。新車からマメな洗車をしていれば特筆すべきことはないが、通常のカーシャンプーでは落ちないため、あまり多いようだと専用の薬剤が必要になる。ボディに突き刺さった鉄粉は勿論、傷の原因となる。

 

・スケール汚れ、イオンデポジット

ボディ全体を白っぽくくすませ、時に白い斑点として現れる恐ろしい存在。この上からガラスコーティングなどしようものなら、斑点の上に斑点が発生し、もはや研磨することでしか綺麗にすることはできない。マメな洗車や、青空駐車を避けることで防止が可能だが、発生原因が「水」であり、濡らさずに走行や洗車をする方法などあるだろうか?いや、無い。*1

 

・油分、残留したワックスやコーティング

こちらも、もやーっとしたくすみで愛車に「経年劣化車」のレッテルを張り付けてくる。汚れの中では一番目立ちづらく、塗装へのダメージも深刻ではないが、水染み、水垢を誘発させる上、愛情をもって愛車を手入れする人ほど蓄積しているものである。*2

 

戦うための道具

それでは実践的なパートに移ろう。最低限必要なものから列挙していく。

・高圧洗浄機、シャワーノズル付きホース

何はなくとも、水をかけないと話にならない。高圧洗浄機は持っていると便利だが、出し入れが面倒で高額な点が敷居を上げている。

スノーフォームランスと呼ばれる、泡を噴射できるアタッチメントがあると諸々捗るが、初心者が安易に楽をしたくて手を出すべき存在ではない。*3

目に見える大きな汚れを吹き飛ばすことが最大の目的なので、水圧の高いヘッドであれば普通のホースでも十分事足りる。

ちなみに本気の洗車プロは純水器と呼ばれる装置まで持っているが、これは別の世界線でのお話なので、購入を検討するくらいなら素直にプロの洗車ショップにお願いしたほうが早い。

 

マイクロファイバータオル

洗車において最大の労力を求められ、ボディの最大の敵である水を除去するための拭き上げに必須。

水だけでなくワックスや撥水材、あらゆる場面の仕上げで使うため、何枚持っていても無駄にならない。引っ越した先に車好きがいたら、ご挨拶にはマイクロファイバータオルが喜ばれるだろう。

ちなみに何をするにも、必ず濡らして硬く絞った状態で使うこと。布の硬さでもボディの塗装面は簡単に傷が入る。そしてボディ用、液剤別、下回りなど、使い分けつつ、汚れたら洗って、数回使ったらすぐに捨てて構わない。

意外と洗濯機内部の糸くずやゴミなどが絡みついて取れないので、寿命は非常に短い。

 

・カーシャンプー

必ず必要だが、これといって条件があるわけでもない。目的や効果も様々で、お値段的にもそれほど財布を圧迫してこない。問題は洗いたい時に手元にあるかどうかだけだ。

鉄粉除去剤が入っているもの、ブレーキダストに強いホイール専用、酸性、中性、アルカリ性、色々とあるが、amazonを眺めて売れ筋のもので構わない。

ちなみに希釈倍率が高くコスパが良いものは、洗っても洗っても無くならないというマゾ向けの商品となっているので、洗車沼の入り口はシャンプー沼と言っても過言ではない。

 

・スポンジ

洗うための道具全般。実際にボディに触れるものなので、タオルよりも質が求められますが、使い方さえ分かっていれば何を使っても自由です。

食器洗いなどのスポンジに酷似した商品もありますが、柔らかいものが多いです。スポンジ自体で傷をつけることを防ぎ、泡の保持を長くするためです。

マイクロファイバータオルとほとんど同じ素材の、ウォッシュタオルや、ウォッシュミットも、ここ最近では定番になっています。水を多く含みやすいため、重たいのが欠点ですが、洗車は力を入れてこするものではないので、流れるように作業できます。

意識の高い人は羊毛のミットを使う人も多いでしょう。極限までボディへの傷を防ぐことが目的ですが、細かいゴミが絡みやすく、泡となじみにくい気がして個人的にはスタメン入りしませんでした。

さらに意識の高い人は、細部の洗浄用に筆を使う人も増えてきました。目立たないところほど、汚れていると目立つものです。

 

・ワックス、撥水材

この辺は洗車を終えた後の美観の問題であり、好みと言えばそれまでだが、次回の洗車の手間を減らしたり、洗車頻度を下げてくれる効果もある。

何より愛車を美しく保つことが目的なので、綺麗になるほど達成感を生み、モチベーションが変わってくる。

ボディの艶という点に置いては、一番手間がかかる固形ワックスに勝るものはない。苦労する分、愛おしさもひとしお。

撥水については、フロントガラスだけでも施工しておくと雨の時に運転を楽しくしてくれる。汚れもつきにくくなり、ワイパーやウォッシャー液の使用頻度も下がって経済的だ。

特にフロントガラスが汚れて、ウォッシャー液をぶちまけてワイパーを動かすことで、ボディに汚れが飛散し、二次災害を生むことになる。

ボディの撥水については、色々と派閥が存在するので戦争にならないようにしましょう。

通常の綺麗に保たれた塗装面は親水状態と呼ばれ、水がだらーんと垂れていく状態。水はけは最も悪く、水滴の高さも低いです。

メリットとデメリットが分かりやすいのは撥水状態。ボディのコーティングはほとんどこれを目的になされることが多いです。濡れたボディにコロコロとした水滴が発生し、急な角度や風を受けると水滴が流れ落ちる様は絶景。その反面、流れ落ち損ねた水滴は、水分に含まれるミネラル分を残して蒸発し、ボディに残留します。炎天下の青空駐車では自殺行為になるでしょう。

玄人好みで定義が曖昧なのが疎水状態。丸い水滴はほとんど発生せず、かといって親水状態よりも圧倒的に早い速度で水がはけていきます。拭き上げも非常に楽で、マイノリティながらも良い仕事をします。欠点があるとすれば商品の少なさや、施工の手間、耐久性の短さでしょうか。

 

実際の流れ

それでは上記の道具を踏まえた上で、理想的な洗車の手順を見ていきましょう。

まず洗車をしようと思い立ったら、天気予報を確認します。冗談だと思いますか?そんなわけないだろ、洗車舐めてるのか?

洗車は必ず快晴ではなく曇りの日などに行うこと。真夏の炎天下などは弾薬庫で煙草を吸うのと同義です。*4

愛車の最大の敵は、汚れそのものではなく、水および水に含まれる成分です。直射日光によって揮発する際に残った汚れは、確実に塗装面にダメージを与えます。最悪、水滴のレンズ効果で取り返しがつかないことに。

また、走行直後でボディやホイールが熱を持っている状態も好ましくない。洗車を開始したら、まずは何を置いても水をかける。汚れを落とすためでもあり、ボディを冷やすためでもある。

最初の関門は砂や泥。可能な限り強い水圧でボディ全体を濡らしながら吹き飛ばしていく。*5

最初に洗い始めるのは足回り。一番汚れているところから。スプレータイプの足回り専用洗剤や、専用のブラシなどを持っておくと捗る。

次にバケツに溜めておいたカーシャンプーを、スポンジ等でボディに乗せていく。洗うというよりは、載せて撫でるだけに近い。少しでも抵抗を感じたら、スポンジを洗って綺麗な状態で行うこと。神経質な人はシャンプー用とスポンジ洗浄用に2つバケツを用意する。

全体を洗い終えたら念入りにシャンプーを洗い流し、洗い残しが無いことを確認する。洗っている最中に渇いてくるようなら、分割して行うこと。左側だけ洗う→洗い流して拭き上げる→右側を洗う。

濡らして硬く絞ったマイクロファイバータオルで拭き上げ、小まめに絞って水を落とす。この状態でタオルがひどく汚れているようでは、最初の手順が不十分だったことになる。拭き上げながら鉄粉やスケール汚れなどを確認していく。*6

特にミラー周り、ドア周り、トランク周りは隙間に水が残りやすく、拭き終えたと思っても安心しないこと。後から水滴が垂れてきて跡が残りやすく、放置するとそこが水滴の通り道になってミネラル分などが蓄積していく。湿ったタオルなどを押し当てていると、結構いつまでも水が出てきて驚く。万全を期すならば、拭き上げ後にドアは全開にしておくとか、細かい隙間はブロワーで吹き飛ばすなどが望ましい。

除去可能な汚れがすべて落ちた後は、至福のお手入れタイムだ。固形ワックスを塗り込むもよし、タイヤやホイールにも専用のワックスがあるので試してみるのもいいだろう。

勿論、車内の清掃だって洗車のひとつだ。運転していて気になるのは、フロントガラスの外側よりも内側の汚れだったりするものだから。

新しい撥水材試してみようかな。内装専用のクリーナーを買ってみようか。お気に入りの芳香剤を見つけたら儲けもの。いつかあんなパーツをつけてみたいな。

楽をするために、洗車グッズを買い揃え、満足のいく洗車ができたら、新たな物欲が沸いてくる。洗車に終わりなど無く、いつしか手段が目的へとすり替わっている。そう、これが洗車沼である。

 

*1:初期症状では専用のスケール除去剤で簡単に落とせるが、完全にデポジット化したものは、やはり研磨するしか手はない。

*2:こちらも専用の油分除去剤で簡単に落とせる。スケール除去と併せて行いたい。

*3:手洗いをする前の予備洗浄程度に留めるべきで、ボディの細かい隙間に入った洗剤が非常に厄介。

*4:筆者は真夏に洗車を行う際にAM4~5時起きである。

*5:まずないとは思うが、プロ仕様の高額な高圧洗浄機は要注意。マジで塗装がハゲる。

*6:必要であれば洗車で落とせない汚れに効果のある、専用の液剤で除去を行う。

Netflixオリジナル映画『オールド・ガード』レビュー

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 オールド・ガード(原題:The Old Guard)

監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド

主演:シャーリーズ・セロン

 

Netflixオリジナルなので、少し警戒したものの、セロン主演アクションに釣られて視聴。

前回のアレのこともあるので、本当に期待しないで見たのが功を奏した感じ。

↑前回のアレ

 

今作はRotten Tomatoesの批評家支持率79%です。どれだけひどいかがよく分かりますね。ちなみにどちらも大人版アメコミのグラフィックノベルが原作。

あらすじはこんな感じ。

何世紀にも渡り、歴史の影で暗躍し、誰にも知られることなく人類を守り続けてきた秘密の特殊部隊オールド・ガード
そのメンバー5人は永遠の命を持つ不死身の傭兵たちであり、ある日、傭兵たちの不死身の能力が何者かによって暴かれ、恐るべき陰謀のためにその能力を複製しようと企む強大な謎の組織から狙われることに

 

全体の印象として、アメコミ的なご都合主義を隠すつもりは毛ほども無いんだなぁ、と感じた。

主人公たちが不老不死であることは、そういう設定として受け入れられるものの、科学的に解明しようとする動きがある割にはそのメカニズムの一端には触れられない。

こういう非現実的な設定の部分を、スクリプト用語では「リアリティライン」と呼ぶが、どこまでそういう設定とするか、という線引きは中々難しい問題と言える。

舞台設定が現実とさほど変わらないにも関わらず、主人公の設定が現実離れすればするほど、観客の共感は薄れ、作品世界への没入も薄れ、チープな仕上がりになる。

 例えば同じ不死の設定を持つ作品に、漫画の『亜人』が挙げられる。

この作品では、生まれつき特殊な物質「IBM」を発生させることができる人間が、不死の能力を持っている。

老化はするので寿命はあるし、IBMによって治療できる限界も存在し、肉体の損傷自体は修復できても、蘇生が行われない場合もありうる。

亜人』の中に存在するリアリティラインでは、この「IBM」だけが設定として作られ、その他の副次的な現象はほぼ現実世界と等しい。不老不死を扱う作品の中でも、かなり稀有な作品と言える。

 対して、今作の『オールド・ガード』では不老不死で数千年生きることができ、発生条件は不明で、不死者が発生した場合は能力者同士でお互いを認知できる。

不死者はごく普通の人間として生まれ育ち、怪我や病気もするが、ある日突然不死者になる。トリガーは不明。そして曖昧でありながら、恣意的な目的を持ち、ある日突然その役目を終えて不死能力は失われる。

説明不足であることに加えて、妙にスーパーナチュラルな設定がチラホラ出てくる。予知夢とか運命とか役目とか。

これは欧米人のお国柄というか、アメコミのよくある傾向とも言えるが、主演のセロン演じるアンディの厭世的で無神論な主義主張とギャップがあって、上手く機能していない。

原作がもうちょっとボリューミーなことを鑑みると、本来は登場人物の過去であるとか、心情の変化みたいなものに応じて、設定が開示されていくのかもしれない。

 

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通称アンディ。みんなからは「ボス」と呼ばれる。

正確な誕生年等は不明だが、本名は「アンドロマケ」でスキタイ族であるらしい。

今作の不死者はみな、何かしらの戦士であり、戦場で殺しあう最中の「戦死」が不死のトリガーになると推察される。

ただの遊牧民ではないことや、途中少しだけ映る衣装や戦闘スタイルから察するに、紀元前200~900年あたりだろうか。

神様なんていない、すべての現象に意味なんてない、という主張を持つが、不死者の勧誘には熱心で、自分の不死能力はそうでない人を救うために惜しげもなく用いる。

誰よりも運命論者で、長生きしすぎているためか達観している。もはや諦観の域。

 

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本名ナイル・フリーマン。1994年生まれらしい。

映画冒頭で、海兵隊員としてアフガニスタンで作戦中に戦死、そのまま不死者として蘇る。

出来立てほやほやの不死者のため、アンディに色々と質問したり戸惑いを見せるが、そういう立場が観客の作品案内役として機能している。その割にまともな解答を示さないアンディに、余計イラ立つ。

他の不死者メンバーは歴戦のツワモノ感がすごいが、彼女は人を殺したことも、死んだことも一度しかない。(彼女が所属する部隊は全員女性であり、ムスリム圏で作戦を行う上で現地女性に配慮した部分のみを担っていたと思われる)

その割に、映画中盤以降は開眼してジョンウィックみたいなアクションをバリバリ行うようになる。不死者ってすごいですね。

 

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ブッカーさん。1770年生まれで、ナポレオン率いるフランス軍に従事。1812年に加入とあるので、恐らくロシア遠征により戦死。

元妻子を持つ身であるが、家族は既に他界。不死は遺伝しないってことですね。

ナイルが加入するまでは一番の新参者で、お酒をこよなく愛す。

 

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ジョー。1066年生まれ。エルサレム近郊出身でイスラム教徒と思われる。

ロマンチストなガチホモ。

 

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ニッキー。1069年生まれ。元十字軍。

恐らく第一回十字軍遠征でジョーと出会い、お互い不死者となっては殺し合いを続けていたが、度重なる死線を超えて恋に落ちる。なんのこっちゃ。

 

 原作のお陰か、キャラクターの設定はしっかりしている。ゴリゴリのバトル作品ではあるが、アンディとナイルという中心キャラが女性であり、メンバー内にLGBTがいたりとポリコレ対策が完璧である。

映画版の監督に女性が起用されているのも、そこらへんに理由がありそうではある。

ただ、なぜかジョーとニッキーの熱烈なキスシーンには過剰なまでの妨害が入る。なぜだ。

これは深読みではないと思うが、アンディの元相棒であるクインという女性は相棒以上の何かだと思うのだが。登場人物6人中、4人が同性愛者なんて素晴らしいLGBT配慮ですね。

それとも同性愛が不死の条件なんか?

 

 設定が薄っぺらいけど、アクション良し、キャラクター良しで、グラフィックノベルの映像化としてはよくできていると思う。

原作が未読なので正当な評価と言えるか微妙なところだが、単体のアクション映画としては一見の価値ありと言える。

ひとつ我がままを言うとしたら、不死ならではのトリックであったり、戦闘スタイルがもう少し凝らされていると、もっと満足できた。

無限の住人』や『亜人』に代表されるような、不死と再生を利用したアクションや戦術が活かされると、能力バトルの要素が出てきて格段に厚みを増す。

続編を匂わせる終わり方なので、次回作では不死者同士の戦いが期待できる。そこでもう1歩踏み込んだ映像を見てみたい。

Rotten Tomatoes驚異の0点!ラストデイズ・オブ・アメリカン・クライム

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ラストデイズ・オブ・アメリカン・クライム(原題:The Last Days of American Crime)

監督:オリヴィエ・メガトン

主演:エドガー・ラミレス、アンナ・ブリュースター、マイケル・ピット

 

監督は『96時間』の続編撮った人ですねー。一見まともに聞こえますけどリュック・ベッソン嫌いな人は嫌いだと思います。(適当な感想)

 

映画評論の界隈では、かなりの知名度とそれに応じた信頼性を持つRotten Tomatoesですが、本作はそちらで驚異的な点数を叩き出しました。

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Rotten Tomatoesでは著名な映画評論家の点数と一般レビュワーの点数を併せて表記することが一般的ですが、前者の評論家点がしっかり0点をマークしていますね。

中には物好きがいたり、出演者のファンが同情点をつけることも珍しくないため、一般レビュワーの点数がそこそこあることは頷けますが、評論家が自らの名前を出してまで0点をつける作品というのは、そう多くありません。

というかある種のネタであったり、社会情勢的に肯定できない内容であることもあり得ますが、本作は普通につまらない。妥当な点数

(一説には、暴力描写や権力者による一方的な圧力描写が、現在アメリカで行われているデモの発端となった黒人差別を想起させるという見方もあるようですが・・・。やっぱり普通につまらん。)

実際のサイトから気になった一部の評論家レビューを紹介しましょう。

" 今作が犯した唯一の罪は、映画化されたことである。"

"ストーリーも、登場人物も、セリフもどうでもよく、暴力描写が見たいだけならどうぞ。きっとがっかりするでしょう。"

"制作陣は、皮肉にも登場人物たちと同様に、非常に場当たり的だ。"

"物語の前提となる説明に、時間をかけすぎた"

 

どうでしょう、見終わって読んでみると的を得ていてびっくりしました。そうなんですよ、ストーリーがあまりにも雑で、どうしてこうなった状態になっています。

とは言え、ただ駄作と切り捨てて終わるよりは、なぜこうなったのかを簡単に解説してみます。ダメな映画の例として昇華されれば、存在意義があるってもんです。

 

はじめに、物語のあらすじから。

近未来。アメリカ政府は犯罪を防ぐため、人間の脳内シナプスを操作し、違法行為を阻止するシグナルを発信する計画を実行に移そうとしていた。

そんな中、経験豊富な犯罪者のブリックは仲間を集めて強盗団を結成、シグナルが発信される前に“アメリカ史上最後の強盗”を行おうとする。

 

あれ、面白そうじゃない?ケイパームービー大好きな私も思い切り食指が動きましたが、割と導入はいい感じなんですよ。そしてメインキャストもしっかり個性的。

 

主人公のエドガー・ラミレス演じるブリックさんは、いい感じの髭面タフガイですし、弟想いで才能溢れるギャングスタ。映画『ドミノ』で主人公の女バウンティハンターにベタ惚れの、エスパニョールイケメンを演じていたのが思い出されます。

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アメリカンマッスルなマスタングが似合うタフガイ。でも女性と車の扱いは雑。

ギャングスタのリーダーながらも、服役することになった弟を心配したり、街を牛耳るマフィアの顔色を窺ったりと、意外と苦労人。

拷問したりされたりと、血ヘドまみれイケメンが好きな人はもろタイプだと思います。映画冒頭の「探し回ってやっと軽油見つけたよ。コイツはゆっくり燃えるぜ」と言ってぶっかけるシーンはこの映画最大の見せ場だと思います。

 

対して、彼の相方になるヒロインであるシェルビー(アンナ・ブリュースター)は、ちょっとミスキャストというか、個人的には大外れな女優でした。

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登場シーンからしてこれ。透明ビニールのダサいジャケットを脱ぎつつBARに現れ、なんと自分でイイ女ですとナレーションを入れるアホっぷり。

痩せてガリガリの安娼婦っぽいところなんか、某ジョボビッチを彷彿とさせますし、なんだかバッタみたい。勿論、主人公と婚約者の間をピョンピョンと行ったり来たりします。

ちなみに元FBIでMITを卒業しているという肩書を捏造しているスーパーハッカーです。

彼女が主人公ブリックに近づいて、「最後にでっけえ徒花咲かせやしょうぜ」と計画を持ち込むところから、メインストーリーが始まります。

便利だけどウザい。ひっかきまわし役。

 

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そしてシェルビーの婚約者であり、「とにかくデカい強盗したくてたまらないマン」のケヴィンくん。見るからにサイコでキレたら何をするか分からないポジションだが、人を見る目は結構ある。

その正体は、ブリックと対立するマフィアのボスの息子であり、ブリック弟の死の真相を知る囚人仲間でもある。実は陰で「親の七光り」と言われることに嫌気が刺しており、父親と仲の悪いブリックと手を組んででも、最後の日を恰好よく飾りたいと考えている。絵に描いたようなドラ息子だが、実は超キーマンだったりする。

 

他にもいっぱいいるんですよ。違法行為が完全消滅するから、職にあぶれてしまう優良な警官であるとか、強盗計画に必要でブリックがイチオシする敏腕ドライバーとか

ケヴィンくんのお父さんとか、妹とか、シェルビーの妹とか、マネーロンダリングしてくれる悪いやつとか

これ全部いらない。超クソ。

そもそもが、映画の150分という長尺を作り出したのだって、この一見無意味な登場人物の多さにあるわけで。そりゃ遠隔操作でシナプスをいじって?違法行為ができなくて?この辺の説明が冒頭に入るのは分かりますよ。

説得力を持たせるために主人公が普通の強盗するシーンだって要るし、仲間になるシェルビーとケヴィンのエピソードだって必要です。だけど、あまりにも中盤が中だるみしすぎて、物語の推進力が一気に失われていくんですよ。

 

~ここからスーパー脚本メソッドタイム~

理想的な映画の尺は、100分程度と言われている。これは人間が映像に集中できる限界でもあり、必要最低限の物語の展開を起こせる枠でもある。

この長さを三分割して起承転結させていけば、大体退屈しないというか、それなりの作品に仕上がる。また、この三幕の比率も1:2:1であることが多く、導入シーンは25分程度、メインは50分程度で収まることが多い。(残り25分くらいでクライマックス。)

必ずしも100分でなければならない、というわけでもないが、この三幕構成だけはしっかり守ったほうがよい。でないととんでもないことになる。

ちなみに名作中の名作、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は116分という長めの尺でありながら(さらに三部作でありながら)この基本はしっかりと守られ、映画開始からきっかり30分で、マーティが過去にタイムスリップして納屋に突っ込む。

~ここまでスーパー脚本メソッドタイム~

本作は150分という尺なので、導入は40分までに終えるべきだろう。ちなみに40分あたりのシーンがこちら。

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急に飛び込んできたアメリカ犯罪史上を賑わせる大きなヤマに、ブリックは警戒しつつも実行に移すことを決める。おちゃらけたケヴィンが「俺がボスだぞ」なんて息巻いていますが、どこか3人はぎこちなく、不穏な空気が漂いつつも物語は本番へ・・・。

悪くない感じに見えますよね?肝心の強盗計画がほぼ白紙なことを除けば。

ブリックはヤマを持ち込まれた側であるにも関わらず、テキトーに現場の観察して「いけるで」とか確信してるし、持ち込んだ側のケヴィンは「で、どうやんの?」とか言ってるし、全然ワクワクしてこない。

ケイパームービーの肝は、その強盗テクニックというか「おお、これならいけそうやんけ!」が何よりの醍醐味であり、計画に障害が現れては次々と解決していくのが王道になっていますが

強盗先の内部の状態も分からない観客は置いてけぼり、挙句、計画に絶対必要なブツも頼りないケヴィンにまかせっきり、そして最終奥義であるシェルビーのスーパーハッキングで大体どうにかなる。

とにかくこの二幕目であるメイン部分が究極的におざなりで、見ている側はあっという間に視聴し続けるための推進力を失っていきます。

作品を継続させていく推進力は、いわば自転車のペダルをこぎ続けるようなもので、速度が落ちるとあっという間に脇道に逸れてしまう。この作品で描きたかったことは何なのか、その辺がぶれぶれで、色んな登場人物が伏線も微妙なまま登場しては消えていきます。

特に推進力の分かりやすい例として展開される「主人公に立ちふさがる障害」ですが、コイツらはとにかくそれを自分で作っちゃう。そんで勝手に「きちー」とか言っちゃう。そもそもAPI(米国平和計画。クソダサネーミング。)発動まで時間が刻一刻と迫るにも関わらず、割とのんびりする主人公たちであるとか

金庫開けるための訳わからん戦車砲弾をケヴィンの親父がコレクションしてるとかで、なぜかいがみあうブリックを連れ立って正面から乗り込んじゃったりする。

この砲弾回収ミッションが本作一番の見せ場アクションシーンとなっており、確かに演出単体で観れば二番煎じ感は否めないとはいえ、悪くない出来になってるものの

「お前10億ドル盗もうって日に、ギリギリになって超危ない橋渡るとかアホじゃねーの?ていうか事前にこっそり盗むなりパパにねだって譲ってもらえや」となるわけで。

そんなことだから、当然のようにブリックは計画実行直前なのにマフィアに復讐されたり、シェルビーは人質として拉致されたりする。これ全部いらない。ちなみにケヴィンは腹を撃たれてピンピンしている。

さらに、この展開の何が最悪って、ケヴィンのお家騒動でもあるわけで、観客がケヴィンの方に感情移入してしまう仕組みになっている。描く順序が完全に逆なんだ。

主人公であるブリックのエピソードは、長尺のせいで1時間も前にやってるもんだから、主人公なのに置いてけぼり。復讐だけされに行ってる。

無駄な登場人物である優良警官も、推進力として障害になるが、なぜかシェルビーに襲い掛かる。マジでこの映画誰が主人公なん?

上映時間の長さであるとか、三分割された構成であるとか、そういうフォーマットは、映画館で上映することを前提としているからこその「制約」とも言えるわけだが

Netflixはこの「制約」にとらわれずに済む、というメリットがありながらも、フォーマットから得られる観客のコントロールを完全に失っている。

社会の顔色を窺って、ポリコレ色の強い作品が批判されることも多いNetflixだが、むしろ作品がつまらない原因の多くはこの「配信だから許される自由さ」にあるのではないかと思う。

優れた娯楽は、制約に抗うための工夫から生まれるのではなかろうか。さながら禁じられた恋愛がよりいっそう燃え上がるかのように。ごめんなさい言ってみたかっただけです。

 

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二幕から三幕への転換点、ラスト40分で一気に伏線回収をはかる場面。ここまで実に1時間50分かかっている。

無事に10億ドルを強奪し、トラックに積み替えてカナダまで高跳びやで~というシーンである。ここでケヴィンがとある告白を行うことで、回収しきれていなかった無駄な伏線の登場人物も参加する。

そもそも一幕で40分もかけて世界観や設定の説明を行っていたにも関わらず、どうも腑に落ちない点があったんですよね。嫌な予感はしてましたが、近未来SFとして目をつぶっていた。

脳のシナプスに働きかけるって何・・・?ていうか違法行為の定義って何・・・?スーパーハッカーのくせにシェルビー役立たずすぎん?

API発動中には、何ができて何ができないのか。分からないからただ主人公が頭抑えてるのを観客は眺めるしかない。

API発動の本当にギリギリで計画実行しなければいけない理由って何?もっと早く実行してもいいし、シェルビーがいるなら最悪API発動後でもいけるんちゃうん?

ケヴィンくんの犯行動機は「親父を超えたいから」なことに偽りはなさそうだけど、相方がブリックでないといけない理由付けも弱い。

「ふーん」程度のどんでん返しがこの映画にはあるけれど、それって150分もかけて描くようなネタだったのだろうか。

もっと低予算で、もっと短い時間で、鳥肌が立つような鋭い三幕目への転換を私は知っている。そういった意味では、実に冗長的で、映画化する意味があったのか非常に疑問な作品になっている。

 

あとエンディングはごく普通のハッピーエンドなんですが、胸糞悪いです。

『レオン』のナタリー・ポートマンに土下座して謝ったほうがいいです。

三日坊主撲滅委員会

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 何かを継続することは、それだけで尊いし、完遂させることはもっと尊い。特別なことじゃなくたって、結果として残すことが大事だ。

 物質的なものであれ、そうでなくとも、物を作るうえで一番難しいことは「完成させること」だろう。何かを計画することはそれだけで楽しいし、一時のやる気で着手することもままあるが、そのモチベーションを維持して完成にこぎつけることは、それなりの苦痛を伴う。

水が低きに流れるが如く、「いい発想だった」とか「完成すれば傑作だ」などと誤魔化し、未完成を思い出にして、やがてその繰り返しに罪悪感を覚えなくなっていく。

そうなれば立派な三日坊主の完成である。

 よく言われることだが、小説で賞を受賞した新人が乗り越えなければならない最初の難関は二作目の執筆である。それは時間や労力を自由に割り振れた処女作よりも、数撃った鉄砲のたまたま当たった受賞よりも、困難であると言える。

そして「準備期間」や「充電期間」や「箸休め」などという詭弁を弄し、ただただ時間や、それ以上のものを失っていく。

 ここで一つ、勘違いを正しておきたい。ネタやアイデアというものは出し尽くして枯れてしまうことはないし、まして時間経過で復活することはない。

さながらコントロールデッキ*1のように、自らのライフを強固に守りながら、アイデアの流出を防ぐことに執心し、パーマネントによってターン経過ごとにアイデアを得ていくような、そんな戦術は創作活動にはあり得ない。

かと言って、ランプデッキ*2のように大きなネタを開幕に出してみせたところで、それがリーサルに繋がらなければやはり息切れしてしまうだろう。

イデアとは、それ自体を消費する過程で別のアイデアが生まれるものである。つまりほとんどのアイデアには、それ自体にドロー効果が付与されていると思ってよい。

大きなアイデアには、それに準じた、あるいは副次的な小さなアイデアがいくつか発生しうる。あなたはそのアイデアを同ターンに使用してもよいし、使用しなくてもよい。

大切なことは、アグロデッキ*3よろしく攻撃の手を休めないことである。あなたがアイデアの利用をやめない限り、アイデアは発生し続ける。少なくともライフを完全に失わない限りは。

 ここまで書けば、この指南のようなものが一体誰に向けて書かれているのか、賢明な知人であれば察しがつくであろう。

「永住地を探し求める」などといった妄言を繰り返し、開拓者の様な面構えで、イナゴの如く新芽のみを食らいつくし、後ろ足で砂をかけていくアイツである。

口では「そのうち書く」と言いながら、一向に行動に移さない。そして何も形にならないまま、「仕事が忙しい」と言い訳だけが増えていく。

物事に向き合うということは、そのもののためにどれだけ無駄に時間を浪費できるかどうかだ。

  上述した通り、人間は低いほうに、楽なほうに流れていく。何から手をつけていいか分からない、無駄に浪費をするのが怖い、それは確かにそうだろう。

しかし楽をすることの最大のデメリットは、分岐点で失敗を選びやすくなることだ。人間は慣れてきた頃に、易きを選んで失敗する。

楽をする習慣を覚えるよりも、失敗しない習慣を学ぶべきだ。そして失敗しない方法こそが、時間を浪費すること、アイデアを消費して生み出すことに繋がっていく。

 

 日記の三日坊主でよく起こることは、1日の終わりに出来事を書き連ねようとすることから始まる。そもそも就寝前に日記を書く習慣自体が無いのだから、忘れたり億劫になることは想像に難くない。

ベッドサイドの目につくところにテーブルがあるのなら、灯りとノート、ペンを置いておく。眠気が勝ってしまうのなら、日付と眠気に負けたことだけでも書くとよい。あるいは、常にノートを携帯し、出来事が起きるごとに記しておけばよい。

要するに書くことへのハードルを下げ、物理的に書ける状態にしておくことが望ましい。

ブログの記事にしても、ブラウザのタブに常時表示しておき、書いたことはすぐに公開しなくとも、下書き状態でどんどんストックしてもいいのだ。

この時、ストックされた下書きに定期的に目を通すこと。未完成でも改変していけばいつか公開できる日がくるかもしれない。

 

 創作物で手が止まってしまうことの多くは、時間のかかる単純作業に差し掛かった時というよりも、少し複雑でどこから手をつけていいか分からなくなる瞬間である。

テンプレートを作成して、全体から俯瞰してみるとどこから手をつければよいか分かりやすくなる。

スクリプトを手掛ける時には時間枠を決定することでページ数が決まり、ページ数が決まることで演出の要不要を仕分けしやすくなる。さらに全体を三分割して、展開の位置を決めたら、あとは単純作業でページを埋めていくだけになる。

これはカードゲームでまずデッキ全体のカード枚数を決め、攻撃カードと防御カードの配分を決め、逆算してデッキを組むことにも似ている。*4

あとは単純に枠組みをパクってしまったっていい。人間が作り出せる物語なんて、マクロの視点から見れば似たようなものだ。神話でも民謡でも、時代を超えて残っているということは、それだけ人の心に残りやすい、シンプルで優れたスクリプトと言える。

桃から生まれた桃太郎が、急に眠り病にかかって王子様に助けられた挙句、地下迷宮に閉じ込められたりはしない。仲間を連れて鬼退治でいいのだ。

 

 全体を俯瞰しても整理できないほど複雑になってしまったら、今度は原点に帰ることも忘れずに。その創作物での目的は何なのか、書きたかったことは何なのか、いくら優れたアイデアであっても、そこがぼやけるようでは無駄なアイデアになってしまう。

2時間の映画であっても、あらすじを3行で説明できない作品は冗長だ。勿論その限りではない大作もあるが、そういうのはいくつか作品を完成させてから手掛けよう。

ブログ記事なら箇条書きだっていい。言いたいことが伝わりさえするなら。大抵は箇条書きに補足していくだけで体裁は整う。

 こうしたテクニックとも呼べない小さな積み重ねが、未完成を少しでも完成に近づけることができるし、完成したものをいくつか見直してみると、ある程度、自分の癖であるとか、優れた法則みたいなものが見えてくると思う。

レビューを書く時には、褒める時には良いところを先に書いたほうがいいな、とか。逆にけなす時には最後にこうするとよかった、と改善点を書くとか。

 

 楽をするということと、工夫をするということは、同じようでいて全く違う。頭と時間を使わなければ、工夫は決して生まれない。

「下手な考え休むに似たり」とは昔から言われるが、時間を浪費しないものが行動をすることは決してなく、行動なくしてアイデアは生まれない。

 

いかがでしたか?この記事が気に入ったら皆さんも日記を書いてみて下さいね!

天気の欄は週間予報を見て先に埋めてしまうといいですよ!

*1:カードゲームにおいて、相手のライフを削ることよりも、形勢を掌握して有利な状況を作ることを優先する戦術。

*2:同上。大きなコストを消費する代わりに、勝負を決定づけるような大物手を狙う戦術。

*3:同上。積極的に攻撃を仕掛ける戦術のうち、どちらかと言うと手数を重視した立ち回りを指す。

*4:全体の枚数があらかじめ決まっているTCGも多いが。

Minecraft Dungeons覚書

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小学生向けハクスラゲーム、マイクラダンジョンズ。

ちなみに現役の小学生は本家マイクラで立派にプログラミングを勉強している。

 

  • レベルとパワーについて

現状把握しているのは、キャラクターレベルは100を超えても上がり続ける。

装備にエンチャントを付与するためにはいくつあっても困らない。(装備のお試しや目的別に装備セットを持てる)

アイテムのパワーに関しては108が上限のようで、自身の平均パワーが100を超えていれば100~108からランダムで出現するようだ。

パワーが8も違うと防具のHPはともかく、武器やアーティファクトのダメージはかなり変動する。

 

レベル上げは「???」と呼ばれる通称「裏ダンジョン」を周回するか、「レッドストーン鉱山」のスポーンブロックによる無限沸きを利用するのが一般的。

前者はボスを除いて、遠隔攻撃をしてこないキノコ牛のみが出現する周回用MAPになっている上、恐らく経験値も優遇されている。

とはいえエンチャント個体も出現するし囲まれやすいので装備が揃わない内は難易度が高い。

後者は放置狩りも可能なようだが、追加で沸き続けるモンスターがエメラルドをドロップしないようなので利点は少ない。

 

パワーを上げる手段は、自身の平均パワーを参照してドロップが決定されるため、普段使う装備でなくともパワーが高ければ保管しておくとよい。

この平均パワーの参照が「ロードしてキャンプに入った時点」で行われることに注意。

つまりある程度エメラルドを所持した状態で、持っている装備で一番パワーが高いアイテムを装備してメニュー画面やミッション選択→即キャンプ帰還などを行い

鍛冶屋からアイテムを購入、ある程度平均パワーが更新されたらロードをし直す、などが簡単で早い。

アーティファクトの更新も行商人から同様に行えるが、アーティファクトはユニークがない上、費用も倍額なのであまり効率はよろしくない。素直に適正レベルのミッション報酬で入手していくほうがいいだろう。

ちなみに鍛冶屋と行商人の費用はキャラクターレベルによって変動する。どちらも上限は160と320で止まるようだ。

 

  • エメラルド稼ぎ(ユニーク収集)

エメラルドの入手は宝箱や壺の開封と、敵からのドロップ、アイテムを破壊して回収の3つ。

入手量と確率を増やすことに特化した近接武器を作るか(後述)、周回効率の良いミッションをひたすら回ることになる。

メジャーな方法は「湿っぽい洞窟」で確定のダイヤ箱を開けていくことだろう。ダイヤ箱はユニーク確率も高く、アイテムも2個出やすい。

稼いだエメラルドはひたすら鍛冶屋に貢ぐことになる。

 

  • 装備について

ハクスラにおいて「最強装備」みたいなものはビルドによって変わるため、あまり適当な表現とは言えないが、目的に応じたオススメの装備を列挙していく。

なおアイテムのパワーがカンストしていない内は、ビルドにこだわりすぎると攻略難易度に追い付けなくなるので注意。

 

  • 遠隔武器

順序として弓が簡潔なので先に紹介。

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選択肢としては「乱射のクロスボウ」のユニークか、「爆破のクロスボウ」のユニークのほぼ二択。

どちらもエンチャントの「マルチショット」と「無限」がついていると弾薬効率がよい。

乱射の方は防具に「アーティファクトのクールダウン減少」をつけて「炎の矢筒」を連射していればほぼ無限に撃てる。主に裏ダンでレベル上げをするなど、脳死で殲滅したい時に活躍する。

爆破の方は、瞬間威力が高いのでピンチの時にモンスターの数を減らすのに役立つ。

「花火の矢」や「苦痛の矢筒」も常用は難しいものの、圧倒的威力なので是非使ってみてほしい。

ちなみにエンチャントの「貫通」と「ヒューズショット」は非常に相性が悪い。着弾して1秒後に爆発という効果なので、障害物で爆発する。地形によっては意味のないエンチャントになってしまう。

なお「無限」の効果はアーティファクトにも適応されるため、運が良ければ無限に花火の矢を打ち続けられる。画面見づらいけど。

 

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乱射弓で使っている防具がこれ。「炎の矢筒」を複数詰んで常時遠隔攻撃なので、エンチャントの「臆病」を維持しやすい。「冷気」で敵の接近を抑えられると安定度が増す。

ファントム防具のユニークは「雪玉」の効果が追加されるので、より安定度が増すだろう。

 

  • 近接武器

近接武器は目的として2つしか想定していない。

「エメラルド稼ぎ」と「キノコループで輝くスタイル」の2種。

回復ポーションのクールタイムが長く、モンスターが大量に沸くゲーム性のため、高威力で攻撃スピードの遅い武器はあまり優秀とは言えない。低レベルでの攻略時に遠隔攻撃と交互に使う程度だろう。

 

エメラルド稼ぎに向いている武器は、現状確認できている限りだと2種。

ピッケルのユニークと鎌のユニークにそれぞれエメラルドの入手量が増える効果がついている。

これらにエンチャントの「採掘者」をつけて近接攻撃でモンスターを倒していくのが望ましい。

勿論入手難度は高く、近接のみでモンスターを処理するのも難しいので、「採掘者」と「輝き」のエンチャントをつけた別の使いやすい武器でも構わない。

エメラルド稼ぎにも「輝き」をつける以上、向いている武器種は攻撃スピードの速いガントレットダガー、鎌あたりになるだろう。

 

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ダガーのユニーク。エンチャント「凍結」がついているため、被弾を多少減らすことができる。拘束系のエンチャントは「チェーン」などもオススメ。

 

 

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ガントレットのユニーク。恐らくゲーム内で最大の攻撃速度を誇る。

通常のガントレットはコンボの最終でディレイが生じる上、敵をノックバックさせるので使いづらいが、これはダガーと同様に同じモーションを繰り返す。

敵を追尾して勝手に歩くこともないので処理が格段に楽になる。

 

エンチャントの「輝き」についてだが、攻撃時に20%の確率でHP600程度回復する。(パワー100の場合)

これは広範囲のヒット数毎ではなく、攻撃1回あたりに抽選しているようなので、上述の通り攻撃速度の速さが安定に繋がる。

2つ詰むと確率が上昇するのか、回復量が倍加するのかは不明。ただし明らかに安定度は向上している。

 

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こちらは盗人の防具のユニーク。ダメージ上昇も軽減もないが、速度上昇のOPは珍しい。

 

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こちらはバトルローブのユニーク。攻撃速度をアーティファクトの「シロタマゴテングダケ」で上げることを想定して、クールダウンを優先している。(パワー100のキノコが2個あればクールダウン1つでループ可)

理論上は被ダメージ35%軽減と近接ダメージ30%がついた防具に、エンチャントでクールダウンを付与したほうがよいかもしれない。

ただし、防具のエンチャントは有用なものが多いため厳選がより難しくなる。

 

近接向け防具のエンチャントで紹介しておきたいのは「ポーションバリア」

回復ポーションを飲むことで、ほぼ無敵に近い防御力を9秒間得られる。敵の数も体力も増えるマルチではほぼ必須のエンチャントと言ってよい。立て直しが非常に容易になる。

逆にソロで慣れた場所を周回する分には必要度は低いが、強いエンチャントモンスターが出現した場合や、厄介な遠隔攻撃に耐えれるのは、近接武器としては有難い。

なお、敵にダメージを与えるエンチャントはエメラルド稼ぎには向いていないと思われるので注意されたし。

映画レビュー『歩いても 歩いても』

 前回『マイ・インターン』をなろう系小説と評して色んな方面にケンカを売っていったので、今回も勘違い視点から批評して敵を増やしていきたいと思います。

 皆さんは映画ジャンルのホラー、サスペンス、ミステリーについて正しい定義をご存知でしょうか?何となく怖いやつ、不安になるやつ、謎なやつ、と漠然な印象を持っている人も多いと思いますが、それで正しいです。

ホラーは語源の「恐怖心」から作り出されたジャンルで、見ている人を恐怖させる目的で作る作品、または見る人が怖がって楽しむためのもの。ゴアやスプラッタ描写でスカっとした爽快感を得る目的もあります。

サスペンスは「宙づり」という語源から、足元のおぼつかない不安定さを観客に与え、それ自体を楽しむこともあれば、安定したオチに繋げてカタルシスを覚えるためにも使われます。

ミステリはそのまま「謎」ですね。推理ものの謎解きから、シチュエーションホラー、心理サスペンスなど案外色んなものに当てはまります。

どれも共通して言えることは、その真逆に当たるものをオチに持ち込んでカタルシスを作り出したり、徹底して描写しつづけることで満足感を与えることが脚本にとっての要と言えるでしょう。

 では、現実に起こりえる恐怖や不安、謎というものはどうだろうか。どれもスカっとした解決がなされることは稀で、かと言って娯楽になるほど徹底されることもない。

「事実は小説よりも奇なり」とはよく言われるが、むしろダラダラと見え隠れするばかりで、しこりの様に残り続けストレスになるばかりなのがほとんどではなかろうか。

 

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『歩いても 歩いても』(洋題:Still walking) 2008年

監督:是枝裕和

主演:阿部寛樹木希林

 

監督は『誰も知らない』で一躍知名度を広げた是枝裕和監督。

徹底したリアリティと登場人物を満遍なく描写するスタイルが特徴的で、邦画らしい邦画を撮る監督だ。

正直なところ、若いころは地味でぱっとしない邦画をあまり好きではなかったが、この作品によって価値観を変えられたと言っても過言ではない。いや過言か。

名優の樹木希林を迎えて、たった一つの家族が小さな家の中で繰り広げる日常劇。まさに鬼気迫る演技を見せた彼女が、もうこの世に存在しないことが非常に惜しまれる。

 

 本作のあらすじはこんな感じ。

15年前に亡くなった兄の命日、夏の日。次男である横山良多(阿部寛)は妻と、その連れ子の3人で実家に帰省する。

盆を控えて実家には両親や姉家族も賑やかに集うが、みんなどこかギスギスとしている。

これだけ。ハッキリと言ってしまうが、大きな謎が解決したり、明確なハッピーエンドが待っているわけではない。

それでいて、一人また一人と殺害されたり宇宙人が襲ってきたりもしない。*1

しかしながら、本作の恐ろしさを指摘するレビューは少なくない。それほどじっとりと湿度を持って迫ってくる恐ろしさが、本作にはある。

親の願い、子の望み、醜いまでの家族愛。美しき残酷な現実。

 

 筆者は末っ子の長男であり、跡取りである。父も祖父も曽祖父も同じような職種を生業とし、設立された法人を継承している身だ。

男ながらに蝶よ花よと育てられてきた自覚はあり、その代償として親の望むように生きることを半ば強制されてもきた。

世間一般的には世襲を批判する向きもあるだろう。誰だって無能に権力を与えたくはない。しかし自らの志を、血を分けた子供に引き継いでほしい、というのも無視できない親心と言えよう。

そして一度親から託されれば、全霊を注がざるを得なくなるというのが子供というものだとも思う。

本来、夢だの野望だのを口にするからには自身一代、本人のみで完遂する覚悟を持ってしかるべきもの。

子に託せばいいなどとは沙汰の限り。それは最初から己の器量に余る夢であったのだと省みるべきでしょう。

沙村広明無限の住人』より

 

本作は 親と子の「絆」を描いた作品であると言えよう。しかし「絆」とは本来、家畜を繋いでおく手綱のことを指す。

切っても切れない、特殊な関係性。親子は一世、夫婦は二世の深い関係性を持つと言われるが、なるほどその深さがうかがい知れる言葉だと思う。

はじめてこの映画を見た時には、作品の持つリアルさとテーマの残酷さから震えた記憶がある。『刑務所の中』にも同様の感想を持ったが、身近である点という意味では本作の方が格段に上であろう。

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 とにかく怖いカーチャン。母親はいくつになっても怖い存在なのだ。

 

 樹木希林が演じる母親は、どこにでもいる専業主婦だと言えるだろう。

開業医である夫を支え、たまにしか顔を見せない子供に愚痴を言い、孫を可愛がる。そして亡くした息子をいつまでも、いつまでも惜しむのだ。

考えてもみてほしい。長年連れ添った夫へ「弁明できないことを分かっていながら」呪いの言葉を吐き続け、立派に成長した次男へ難癖をつけては「故人である長男と比較する」のだ。

これはある意味で妻であり母である横山とし子という女性の復讐物語だ。何十年にも積み重なった怨みが愚痴の中に込められている。これほどじめじめした恐怖感を、Jホラーと呼ばずして何と呼ぶのか。

 そして身近にいながら、いつまでも変わらず妻で、母親であったはずの人間が、目の前で認知症のような症状でも見せようものなら。何か大切なものが壊れてしまった喪失感を覚えないだろうか。

 作中でとし子はしょっちゅう愚痴をまき散らす。それこそ毒を吐くように、憚ることなく。こういった行動は、典型的な被害者アピールだ。自分の不遇さを分かってほしくて、肯定してほしくて、止められない。そしてそれが余計に周囲との軋轢を生む。

ただそこに、一抹の希望があるとも言えるだろう。理不尽な怒りは、家族だからこそぶつけられるのだ。赤の他人にまで同じことを求める人はいない。相手をある程度まともな、反応してくれる人間だと認めているからこその行動なのだ。

 

 私はこの作品を、初めて見た時からホラー映画だと定義している。

私たちが普通に生活しているこの世界にも、あなたの知らない闇が潜んでいる。都市伝説の常套句であろう。

姉を演じたYOUも、実に無責任で迷惑な存在として機能している。そしてそんな姉もまた、人知れず子供を虐待し、死に至らしめているのかもしれないのだ。(是枝裕和監督『誰も知らない』でYOUは育児放棄をした母を演じている)

 非常に狭くニッチな世界を、広い視点で描く監督の手腕。これぞ映画と言えないだろうか。まだまだ邦画も捨てたものではないですね。(唐突な身内擁護)

映画レビュー『マイ・インターン』

 学生時代は学業をサボってでも映画を見ていたにも関わらず、映画に関係する仕事についてからは義務感のせいか、はたまた視点が変わってしまったのか、映画を見る本数がめっきりと減ってしまった。むしろ昔観た作品を見返して「やっぱり面白いな」などと懐古することのほうが中心となっているあたり、もう若くないのかもしれないと焦りを覚えることもしばしば。

 ただ流行に後れているという焦燥感はない。映画に関するハード面やインフラは大きく進化しつづけているが、特定の効果を狙った演出などのソフト面はセオリーに大きな変化は見られず、こと脚本に関しては古典の重要性に気づく人も増え、より盤石さを増しているとさえ感じる。

 

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 マイ・インターン (原題:The Intern) 2015年

監督:ナンシー・マイヤーズ

主演:ロバート・デ・ニーロアン・ハサウェイ

 

 監督は『ハートオブウーマン』を撮った監督です。メル・ギブソンが突然女性の心を読めるようになってしまい「こんなに理解してもらえるなんて!素敵!」ってなるコメディ映画。

特殊能力を持った主人公がハーレムを作るなんて、なろう系小説みたいですね。この記事で紹介したい映画も割とそんな作品です。

 

 『マイ・インターン』のあらすじはこんな感じ。

妻を亡くし仕事も退職していた70歳のベン(デニーロ)は、退屈な毎日を変えるため新進気鋭のファッション通販会社にシニア・インターンとしてエントリーする。

この制度は公共事業的な側面を持っているため、企業側もその戦力には大して期待をしておらず、また雇われる側も今どきの企業体質になかなかついていけない人ばかり。

しかしベンは持ち前の洞察力と地頭の良さから、不慣れな環境でも仕事人としての存在感をバリバリ発揮していく。

一方で女社長のジュールズ(ハサウェイ)は、自宅の台所から始めたビジネスを見事に成功させた才能を持つものの、夫と娘が待つ家庭や、社長業と自分の望む働き方とのズレを感じている。

そんな二人がコンビを組んで、人生と会社の立て直しを図るというかなんかいい感じに展開していく、有体に言えば働く女の人が好きそうな映画ですよねって感じ。

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デキる社長はチャリで移動する。(ただし秘書は後ろを走る)

 

 ところでマイ・インターンって邦題にすごく違和感があるんだけどどう思います?(恒例の邦題ディスり)

インターンシップは制度の名前であるものの、その制度を利用して入社した社員のことを「彼はインターンだ」と呼ぶことに不思議はありません。

ただし「彼は私のインターンだ」と呼ぶのは違和感バリバリです。

映画の内容的にベンは社長の専属となるため、内容を反映させたタイトルになっていることは理解できるのですが、原題(The Intern)が違和感なくそれをしているのに対し、邦題があまりにも雑な印象を受けます。

徒弟制度で働く若い人を「あいつは徒弟だ」と呼ぶことに違和感はありませんが、親方が「あいつは俺の徒弟だ」と呼ぶのはちょっと変ですよね。

素直に「あいつは俺の弟子だ」と呼ぶのが一般的な気がします。

こんなことはどうでもいいですか。そうですね。

 

 この映画の面白い特徴として「働く女性」と「オタク男性」という、普通なら相反する属性と言うか、何なら後者が最も敬遠しそうな存在に向けて作られていそうな作品であるにも関わらず、どちらも留飲を下げられる構造になっていることです。

一般的な女性向け作品ですと「完璧っぽい彼氏に振られて落ち込んだりもしたけれど、実は最低野郎だったし、身近に目立たないイケメン見つけたわ。私ハッピーやで」みたいな作品だとか「男に虐げられてきたけど見返してやったで、私って最強ね」みたいな安直なものが多い。

前者の少女漫画的な展開って、オタク男性からするとステレオタイプな悪役イケメンにも、内面とかセンスとかで勝負できる掘り出し物にもなれなくてイライラするだけだし

後者に至っては、ただただ男性が悪役として描かれるだけで、おまけに女性のほうは勝利するに足る明確な強さとか才能みたいなものが抜け落ちているパターンが多い。

敵はいつもナチスソ連で、主人公のアメリカ人には絶対に弾が当たらない、みたいな。

 この作品は飽くまでも男性側のベンを中心にストーリーが展開するし、何なら70歳の爺様に見ている男性が劣等感を覚えることもない。

そして女性からも老紳士に対してセクシャルな危機を感じず、父親のような安心感さえ覚えてしまうのだ。

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デキる秘書は一歩後ろを歩く。(ただしアングルは中心になる)

 

 さらにさらに、このベンという男は非常に優秀なのである。

インターン制度のエントリーには自己紹介の動画を撮影し、youtubeにアップロードするという敷居があったが、勉強熱心なベン(70歳)はあっさりとやり遂げてしまう。

同僚の若い男性社員には恋のアドバイスをし、女社長には企業戦士としてのアドバイスをし、常にデキる男をアッピールしつづけていく。

それを鼻にかけることもなく、ヒステリックに泣き出した女性にはそっとハンカチを差し出す余裕も。なんだこいつ完璧超人か?

50年という人生の半分以上を企業に捧げた戦士は、経験値がまるで違うのだ。そう、これは高度経済成長期を支えた老害が、現代のベンチャー企業異世界転生したなろう系小説といって差し支えない。むしろそうとしか思えない。みんなもハンカチを持ち歩こう!

 

 今どきステレオタイプなヒキオタニートがどの程度生息しているのか分からないが、そんな人にも珍しくオススメできる女性向け映画である。

ニューヨークの華やかなアパレル業界なんて、妖精の出てくるファンタジー世界とほとんど変わらないし。

 

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またオレ何かやっちゃいました?