映画『スティルウォーター』レビュー
スティルウォーター(原題:Stillwater)
監督:トム・マッカーシー
主演:マット・デイモン
あらすじ
オクラホマ州スティルウォーターに住むビルは、フランスに留学する娘アリソンが殺人罪で収監された事を知り、無実を信じて真犯人を探すため奔走する。
上記のあらすじ、嘘です。いや嘘ではないんですけど、露骨に恣意的な表現がされています。ていうか書いたの自分だけど。
このあらすじでリーアム・ニーソンの『96時間』を想像して、マルセイユを駆けまわる元CIAエージェントのジェイソンボーンを期待する人がどれほどいるだろうか?ほとんどそうだろうが!
まず冒頭から被災した家屋の解体作業をして、糊口をしのぐレッドネックなビルから登場し、老いた病弱な母親を置いてフランスに渡仏したのち、5年の歳月でやつれた刑務所の娘に面会し、洗濯物を預かるところから話がスタートします。
5年て!ヨソモノに厳しいマルセイユの土地柄もあってか、再審要求も新証拠も望み薄で、弁護士に頭を下げ、探偵に頭を下げ、途方に暮れるビル。口癖は"Yes,maam"
食事のたびに娘の心の平穏を祈る敬虔なクリスチャンでありながら、娘からは一切信用されていない父親像が、幸薄そうなマットデイモンの演技力で淡々と描かれていく。正直、見ていて辛い。
この作品は荒事で娘を救出するアクションでもなければ、法律や犯罪者を相手に駆け引きを行うクライムサスペンスでもないです。
娘は殺人によって愛する同居人と、服役によって人生を奪われ
父は愛する娘と、過去を清算する時間を奪われ、それでも取り返そうと足掻く物語である。
偶然知り合ったフランスのシングルマザーである母娘との、自らを癒すような、経験できなかった幸福な時間のやり直しのような、切ないやり取りが心に沁みる。
終盤アメリカに帰国して、このセリフである。
マット・デイモン、50歳を迎えて役どころは変わったけど、立ち位置は『グッドウィルハンティング』の頃から何も変わってない。
興行収入的にも、Rotten tomatoes的にも70点くらいの立ち位置だったみたいですが、個人的には地味ながらとても好印象な作品でした。邦画的な楽しみ方ができてオススメ。