ドラマ『ターミナル・リスト』

ターミナル・リスト(原題:The Terminal List) 2022年

主演:クリス・プラット

あらすじ:SEALsアルファチームの隊長ジェームズは、シリアの極秘作戦中に待ち伏せを受けて部隊全滅の危機に陥る。帰国後、報告と記録が自身の記憶と食い違うことに気づき、陰謀への抵抗と復讐を決心する。

 

1シーズン全8話、Amazon制作でPrime会員なら無料で見れます。

Amazonのドラマは地味だけど小道具や美術にお金をかけてて、世界観がしっかりしてる作品が多いです。日本のドラマに比べて海外ドラマは映画並みとはよく言われますが、それ以上にクオリティが高いと感じます。

その点、ドラマとしてはやや中ダルみを感じるものも多く、商業的にはクリフハンガー感に欠ける印象があります。有料チャンネルで毎週公開するような形式ではないからでしょうか。

 

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で演じたピーターは少しお茶目なキャラクターでしたが、本作でクリス・プラット演じるジェームズは、ゴリゴリの叩き上げ軍人でありプラグマティスト。個人的な復讐であっても感情はあまり表に出さず、作戦行動のように淡々とこなすのが格好良いです。

ただしストーリーの構成上、致命的なキャラ付けがなされており、1話で観るのをやめてしまった脱落者もちらほら・・・。

 

良いところ

銃器やミリタリー衣装などは非常にお金をかけており、豪華でリアル。演技指導もしっかりされていたし、銃撃戦のカメラワークも絶妙なバランス。ただしクリアリングの仕草や銃の扱いは少し「クサい」というか、オーバーなシーンも散見されました。

同じようなネイビーシールズもののドラマ『SEAL team』と同様、アクションシーンだけを切り抜けば満点に近いデキだと思います。

あと男女問わずキャスティングもよかったです。個性的すぎないのに、あまり注意深く鑑賞しなくてもどんな人物か分かりやすい。特に復讐を手伝ってくれるかつての戦友、真相解明に協力してくれる記者、追跡しながらも同情的なFBI捜査官など、王道的な配役を抑えてあります。

 

良くないところ

全8話で約8時間ほどの作品になるのですが、その間で頻繁に主人公の幻覚なのか過去の記憶なのか、無意味に感じる回想シーンが繰り返し流れます。特に娘とのやり取りはストーリーに関係しないにも関わらず、何も表現しないままオチにまで使いまわされます。

大抵の場合、こういうシーンは主人公のキャラクターを解説したり、感情移入させるために挿入されることが多いのですが、ストーリー設定の兼ね合いもあってか、信頼できない語り手*1のようにしか機能せず、せっかくの見事なアクションシーンや復讐劇も没入感が損なわれました。応援していいのかどうか判断に迷います。(感情移入の観点から言えば、冒頭から主人公目線で進んでいるので十分確保できている。大事なのは演出が定期的に行われるかどうかではなく、順序が正しいかどうかだと個人的に思う。)

相棒として機能する戦友はやたら従順だし、陰謀を暴く記者は野心や功名心が控えめだし、追跡するFBI捜査官とのやり取りは少しあっさりすぎます。これらの協力的な人物はすべて主人公の幻覚なのでは・・・。実は復讐をでっち上げた単独の軍事クーデターなのでは・・・?とすら邪推してしまいそうになります。

はっきり言って、2時間程度に収めようと思えばできてしまうし、原作小説をレイプすればいくらでもジェネリックザ・シューター』とかジェネリックランボー』が作れてしまうよなぁ・・・という身も蓋も無い感想だけが残ってしまいました。

 

主人公の個性と動機付けがこれだけしっかりしていて、芯の通ったキャラクターにも関わらず、作品世界の案内人や牽引する立場としては頼りなさすぎます。

かと言って、ながら見でもしようものなら、秀逸なアクションシーンを見逃したり、回想や幻覚シーンで時系列を見失ってしまうという手痛い構成。

地味なままでも構わないので、Amazon制作ドラマはもっとターゲットを絞った構成や演出にしてほしいなと思いました。まる。

*1:叙述トリックなどでミスリードを誘う登場人物