お題その8

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「そういえばお題箱なるものを設置していたなぁ」と思い立ち、確認してみたらひどいことになっていた。

2週間以上も放置してしまっていたのですね・・・ごめんなさい。

 

その人にとっての日常が、なんでもないかどうかは主観に依るところであり

同様にその文章を面白いと感じるかどうかも主観なのである。

すなわち、誰かにとって面白い日常とは、誰かにとってなんでもない日常であり

その事実を工夫や書き方で変えるなどと大それたことは、考えないほうが賢明である。

クソどうでもいいことを4行に分けて書いてみました。クソどうでもいいアウトプットをできる訓練をしましょう。

 

クソどうでもいいアウトプットは、その存在はクソどうでもいいのだが、とりあえず文字数を稼ぐことには役に立つ。

面白いか面白くないかは主観だとすでに書いた通りだが、文字数がゼロなら、面白い文章もゼロだ。これは客観的な事実である。

要するに現実をたくさん文字に変えていき、クソどうでもいい脚色を加えてどんどん量産していけば

おのずとその中のどれかは奇跡的にそこまでどうでもよくない文章になる。

物事を達成することに時間をかけることを恐れてはいけない。無駄で遠回りなやり方も経験と割り切れば糧になる。

さあ漕ぎだすのです。現実と文字の限界無き世界へ。そして絶望するのです。自分の語彙力の低さに。

 

どうですか?いっぱい文字が並んでいますか?それでは推敲をして明らかにクソどうでもいい部分や、面白くない文章は削除していきましょう。

言いたいことを書いているのに、上手く表現できていないところは改善しましょう。

順番を変えたり、導入を変えるだけで伝わりやすくなったり、もっと面白く伝わることもあります。

ちょっと待ってください、限界まで推敲を続けるとただの事実の列挙になっていませんか?そうです、大事なのは脚色、演出、言い回しの妙なのです。

読ませる文章になること、人を引き込む文章、それはアウトプットの反復では得ることが難しいのです。

 

それでは次のステップ、文章をインプットしてみましょう。

面白い日常を書きたいのなら、面白い日常を読めばいいじゃない。

アントワネットはいいことを言いますね。

最近読んで面白かったブログはこんなの。

moffril.hatenablog.com

この記事はまごうことなき「なんでもない日常を面白く読むことができる」と思う。

表現が偏りすぎることなくバラエティ豊かで、それでいてある程度の長さを理解しながら読み進めることができる。

書き手に「地力」があるから面白く読めるのだ。このアウトプットは、インプットによって支えられている。

正直なところ、書く能力というのは読む能力に恐ろしく比例する。

30点の文章を書くだけでも、50点以上の文章は読めていないと話にならない。

謙虚に「60点くらいの文章が書きたいなあ」と思うのなら、80点以上の文章は読んでおきたい。それも膨大に。*1

純文学、娯楽文学、評論、哲学、歴史、詩集、ジャンルは問わない。むしろ読んだ本の冊数より、ジャンル数のほうが重要かもしれない。

日常にドラマティックな展開があったり、そういう表現をしたければ娯楽小説から

哲学的な問いを文章に臭わせたいなら、思想書などから

日常をポエティックに表現したければ、詩歌から引っ張ってくればいい。

色んな種類の武器を持っておけば、状況に応じて使い分けできる。武器は数も大事だけど、種類も大事だよ。

 

いっぱい書け。いっぱい読め。結局当たり前でクソどうでもいいことを列挙したにすぎないので

最後に裏技というか、困った時にやる手法を置いておきます。

文章はある程度書いていると、その人独自のリズムや流れができてくる。大なり小なり誰でも持ち合わせているはずだ。

「上手くいっていない」と判断したら、一度最初から書き直してみるのも手だ。

いいオチまで到達しない時や、伝えたいことを言語化できないときに冒頭や導入部分の切り口を変えて再スタートしてみよう。

リズムや流れる方向が変わったことで、違う結果が生まれる。

まして導入の与える印象は強烈だ。娯楽作品でなくとも、同じ事実でありながら、読み手に違った印象を与えるものだ。

ちなみにこの記事ももっとシンプルな文章指南から「その人にとっての日常が~」というクソどうでもいい文章の導入に書き換わっている。その方がより実践的に見えたので。

 

最後に、以前講演で使ったことのある導入文章の秀逸例はこれ。

さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。

綿矢りさ蹴りたい背中』より

目に入った瞬間、「自分にとってのさびしいという感情の定義」を考えさせられ

同時に「鳴るとはなんだ?」と興味をそそられる。

難しい年ごろと言われがちな、少女の難しさを、この冒頭から一瞬で表現できているのは凄い。

初めて読んだ時は声に出して唸った。

こういう完璧な導入の仕方、してみたい。全部は完璧じゃなくてもいいから。さいあくおもしろくなくてもいい。

*1:分かりづらい表現だなぁ。100点の文章ってなんだよ。