いや「論」とつくほど高尚な話をするつもりはありませんが。
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凄い面白い記事だったので、つられて私の好きな女性主人公映画を書いていこうという試み。こちらのブログはいつも有益なデータを教えてくれるのでよく見ています。
『羊たちの沈黙』と『エイリアン』が2TOPなのは納得です。映画タイトルだけでなく、クラリスとリプリーという主人公の名前まで知られている作品はそうないですから。
80~90年代は、社会の出来事が映画のテーマに反映されるのが飛躍的に早まった時代でもありました。女性は守られるだけの存在ではない、合理性の無い慣習なんかクソ食らえ、そういうメッセージ性はカタルシスを生みやすく娯楽映画としても社会啓発としても優れていました。
ところで、上の記事は「女性主人公」というだけであって「戦う女性」ではないのですが、不思議と何かと戦う映画が多いのが面白いですよね。まあ私も思いついた作品はそんな映画ばかりなんですが。
1.依頼人 1994年
いきなり1個目から「これ主人公は少年じゃないのか」って疑惑もあるんですが。戦う女性といえば法廷モノだよなーと思って、一番好きな女性弁護士を想像したらこの作品が思いつきました。
弟と一緒に男性の自殺現場に居合わせてしまった少年は、男性の遺言を聞き遂げたことでトラブルに巻き込まれてしまい、自分と弟を守るために弁護士を雇う決意をする。
『告発の行方』とも迷いましたが、あっちは検事だし元記事でも触れられていたので割愛。ちょっぴり女性蔑視で生意気なクソガキを、司法を巻き込んだ巨悪から守るギャップが女性弁護士ならではで、依頼料はたったの1ドルという粋な演出が印象深い。
2.攻殻機動隊 1995年
アニメ作品でもランクインしていなかったのが不思議なくらいの有名作。やっぱり好きな映画ランキングだと女性票が重要だろうし、そりゃジブリの方が強いよね。
人体の機能拡張や情報通信技術の飛躍的な上昇により、もはや国境はおろか自分と他人を隔てる境界すら曖昧になりつつある、近未来。国家の危機を極秘裏に解決する内閣直属部隊「公安9課(俗称:攻殻機動隊)」に所属する草薙素子は、人間の脳をハッキングするハッカー(通称:人形使い)を逮捕するべく奮闘する。
記憶を頼りに自分であらすじ書いてて思ったけど、攻機って内務大臣直属では?アニメ版だと首相直属だったよね・・・?アニメ劇場版の続編(イノセンス)は主人公がバトーだけど、今作は少佐が主人公でいいはず。TVシリーズ版も少佐が主人公だし。(SSSはトグサが主人公っぽいけど)
攻殻機動隊は「ゴースト」と呼ばれる独自の設定を元にストーリーが展開することが多く、この用語を正確に説明することは非常に難しい。「ゴースト」を持つことが生命が生命たる条件でもあるが、科学技術が高度に発達している世界のため、もはや無機物であるアンドロイドと、有機的なクローン人間との違いはほとんど無い。(まさに”高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない”の典型である。)
ましてAIが「私は生命体であり、人権を持っている」と発言した場合、それが自分を防衛するためのプログラム的発言なのか、本当に自意識を獲得しているのか判断する方法はないと言える。さらに、主人公である少佐(草薙素子)は全身が機械であり、自分がAIではないという証拠もまた存在しない。
こんな感じの葛藤、「人間とは何か」という根源的で曖昧な問いを、極めて人間的とは程遠い近未来の設定で逆説的に浮き彫りにするのが『攻殻機動隊』という作品群のメインテーマだと思っている。(オタク特有のドヤ顔早口トーク)
3.ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記 1990年
1968年ロメロ版のリメイク。ゾンビ映画の中ではトップで好きだし、映画全体の中でも上位にくる。
兄と両親の墓参りにきた主人公バーバラは、ゾンビに襲われて近くの民家に逃げ込む。民家には住人の他にも避難してきた人々がおり、みんなで協力して籠城する決意を固める。
リメイク前後で大きく違うのは、バーバラが自分でも能動的にゾンビと戦う点。ここでも時代が感じられる。「ゾンビと言えば籠城だ!」とか「ゾンビ発生の理由はウィルスだ、宇宙人だ、いや地獄の釜が一杯になったのだ(no more room in hell)」とか、現代のゾンビ作品にも多大すぎるほどの影響を与えている。あらゆるホラー、サスペンス、スリラー、アクションの要素はゾンビ映画に通じると言っても過言ではない理由がここにある。
そういえばゾンビ映画は女性主人公多いね。これもロメロの影響かも。
4.ホワイトアウト 2009年
ケイト・ベッキンセイル主演の・・・何だろうポリスアクション?ミステリー?
南極基地に勤務する連邦捜査官のキャリーは、2年の任期を終えようとする間際に他殺体を発見する。人類初の南極大陸での殺人事件捜査は過酷な環境と犯人の思惑によって錯綜する。
一般的には無名だと思うんだけど、妙に好きなんです。特に主人公が目的のために痛みや苦悩に耐えるシーンがあるのがタイプ。ケイト・ベッキンセイル自体は他の作品も含めて好きじゃないんですが、撮影も大変だったろうし、ストーリーも良くて、オススメです。
密室とまでは言わないけど、特殊な環境の殺人であったり、隠された動機であったり、秀逸なトリックは無いがミステリー作品としても見れる。
5.ストーリーオブマイライフ/若草物語 2019年
一気に最近の作品。たまたま見かけたこのポスターのシーンを見て、いつか見ようリストに入ってました。19世紀後半のアメリカ・ファッションが好きで、特に冬のマンハッタンとかはツボです。
人混みの多い雑踏を、ドレスをたくしあげて颯爽と走る姿が格好良い。リフォームドレスとは違うんでしょうか。ドロワーズとか下着ではなく、労働するのに便利なスタイルなんだと思います。女子校生の制服スカートにジャージみたいな。
マサチューセッツに住む4人の姉妹を描いた群像劇映画。主な登場人物である次女のジョーは小説家を夢見てニューヨークに上京し、前時代的な女性の扱いや恋愛観と格闘する。
1860年代の自伝的小説『若草物語』の映画化。原作はかなりの長編かつ、登場人物の描写やエピソードが家族全体にわたるため、何度も映画化されている。今作は4姉妹の中でもジョーに焦点を当て、原作第一部の幼少期エピソードを交えながら、原作第二部の転換期までを描いている。
男性主導の労働環境、才能と諦め、将来の夢と恋愛の対立、家庭内の事件と不和、あらゆる女性人生の苦悩を詰め込んだかのような内容に圧倒される。嫁姑問題があればコンプリートだったかもしれない。
苦労人として描かれる長女のメグをエマ・ワトソンが演じているのだが、余りの美しさと漂う気品高さから、人物相関図とストーリーが一切かみ合わず、何を見せられているのか理解できなくて脳がバグった。冴えない貧乏教師の妻には見えないだろ常識的に考えて。王族かと思ったわ。ドレスを仕立てるための生地が高すぎて買えず、かと言って安月給と夫を罵ることもできない幸薄さ100%のメグなんだけど、こいつ普段着でパーティ出れるだろ。
美しい4人姉妹と妻を持つ、牧師である父親を演じるのがボブ・オデンカーク。そう、ソウル・グッドマンである。マジで脳がバグるからやめろ。妻はローラ・ダーンで、『ジュラシックパーク』のエリー博士や『アイアムサム』の里親役を演じた人。6歳のダコタ・ファニングを慈愛の心で抱く母親像と、ソウル・グッドマンの妻である立場が嚙み合わなすぎるだろ。あと家族団らんのシーン笑うからやめて。
とても150年前の話とは思えないほど盛りだくさんなので、男女問わず見て欲しい作品。
・まとめ
簡単に紹介するつもりだったが、1個1個に思い入れがあって書き始めたら長くなったしまったのでここらへんにします。もっとあるはずなんですが・・・。
女性主人公の映画ってどうしてもフェミニズムが前面に出てきてしまうので、女性受けがいい作品は男性受けが悪くなったりしそうなものですが、両立することは可能だと名作が証明しています。(『キューティ・ブロンド』とか大嫌いな男性は多いでしょうが・・・。)
よく「男性は目的と解決、女性は共感」などと言われることが多いですが、男性向け映画は「戦う敵が分かりやすいかどうか」女性向け映画は「戦う人がカッコ良くて共感できるか」が大事なんだと思います。
そりゃ男性だって露骨な性犯罪者は嫌いですし、それをボコボコにする綺麗な女性は見ててスカっとしますからね。